転職したものの、入社前に聞いていた仕事や条件と違い、1年以内にもう一度転職を考える人がいます。そのとき気になるのが、短期で辞めたことが次の提示年収にどう影響するかです。結論から言うと、入社1年以内の再転職の提示年収は、直近の会社の年収だけでなく、前々職の年収、直近の会社で任された役割、辞める理由の説明の筋の3つで決まります。短期で辞めたこと自体に年収を下げる決まりがあるわけではなく、応募先がどの年収を基準にし、どの等級で評価するかで結果が変わるためです。

転職の回数そのものが年収にどう影響するかはエンジニアの転職回数は年収に不利かで扱っています。この記事は、入社1年以内という短い在籍を挟んだ場合に絞って、基準にされる年収の選ばれ方、源泉徴収票が1年分にならない問題、賞与が出ていない年の数え方、説明の組み立て方、応募前に確認する5項目を整理します。

結論:基準にされる年収は、直近の会社とは限らない

入社1年以内の再転職で、応募先が提示年収の基準にするのは、直近の会社の年収とは限りません。直近の会社の在籍が短いと、応募先は前々職の年収や、経歴全体の年収の流れも合わせて見ます。

理由は、短い在籍の年収が、その人の評価を表す数字として安定していないからです。直近の会社の年収は、入社時の提示で決まったもので、入社後の評価や昇給はまだ反映されていません。応募先から見ると、その額が本人の実力に見合ったものなのか、たまたま高く提示されたものなのかが分かりにくいため、前々職の年収も合わせて確認することがあります。

具体例として、前々職で数年働き、転職で年収が上がった直後に、1年以内でもう一度転職する場合を考えます。応募先が直近の会社の年収を基準にすれば、上がった後の水準から提示を考えます。一方で、前々職の年収を基準にすれば、上がる前の水準から考えることになり、提示の位置が下がります。どちらを基準にするかは会社によって違い、辞める理由の説明に納得が得られるかどうかにも左右されます。

例外は、直近の会社で担った役割が、前々職より明らかに上の段階だった場合です。短い期間でも、設計やチームのリードなど、上の等級の役割を担った実績を具体的に説明できれば、直近の会社の年収を基準にした評価を受けやすくなります。

源泉徴収票は1年分にならない

短期で辞める場合、直近の会社の源泉徴収票は、在籍した期間分の給与しか記載されないため、年収の証明としてそのまま使えません。応募先に年収を伝えるときは、この点を前提に説明します。

理由は、源泉徴収票が、その年にその会社から支払われた給与の合計を記載する書類だからです。年の途中で入社して、年の途中で辞めた場合、記載されるのは在籍した月の給与だけで、年収の12か月分にはなりません。さらに、賞与の支給日の前に辞めれば、賞与も含まれません。

具体的には、応募先から年収の確認のために源泉徴収票を求められた場合、直近の会社の源泉徴収票だけでは年収が小さく見えます。この場合は、労働条件通知書や雇用契約書で、月額の給与と賞与の条件を示し、年収の見込みを説明するのが一般的です。前々職の源泉徴収票を合わせて示すと、年収の流れが分かりやすくなります。源泉徴収票を求められる場面はエンジニアの転職で現年収はどう申告するかで整理しています。

注意点として、年収を伝えるときは、事実と異なる額を伝えないでください。見込みの額を伝える場合は、見込みであることと、その計算の根拠を明示します。提示の後に書類で確認され、伝えた額と違うと分かると、内定の判断に影響することがあります。

賞与が出ていない年の数え方

1年以内に辞める場合、直近の会社で賞与がまだ支給されていないことがよくあります。このとき、年収をどう数えるかで、応募先に伝える額が大きく変わります。

理由は、多くの会社で、賞与に算定期間と支給日在籍の条件があるからです。入社してから最初の賞与の算定期間を満たしていない場合や、支給日の前に辞める場合は、賞与が支払われません。入社月と賞与の関係は入社月で初年度の年収が減る仕組みで詳しく整理しています。

具体的には、直近の会社の条件を伝えるときに、基本給と手当の月額、賞与の条件(年何回、何か月分の想定か)、実際に支給された額を分けて説明します。「年収の条件としてはこの額だが、在籍期間の関係で実際の支給は月給分だけ」と分けて伝えると、応募先は条件の水準と実際の受取額の両方を把握できます。

注意点として、賞与の条件を年収に含めて伝える場合、その賞与が業績や評価によって変わるものなら、確定した額ではないことを明示してください。想定の額をそのまま確定した年収のように伝えると、後で説明が必要になります。

提示の位置を決めるのは、等級の評価

入社1年以内の再転職でも、提示年収を最も大きく左右するのは、応募先でどの等級として評価されるかです。短い在籍そのものより、経験の中身と等級の判定のほうが、提示の位置に効きます。

理由は、多くの会社で、提示年収が等級ごとに決まった幅の中で決まるからです。等級の判定は、これまでの経験で担ってきた役割と、面接で確かめた力で行われます。短い在籍があっても、経歴全体で上の等級の役割を担ってきたことを示せれば、上の等級で評価されます。

経験年数による年収の違いは、診断モデルの推定で見ると次のようになります。上場・大手、東京勤務、スキル中位の条件です。

実務経験推定レンジレンジの図
未経験340〜399万円
1年未満383〜449万円
1〜2年425〜499万円
3〜5年531〜624万円
6〜9年638〜748万円
10年以上723〜848万円
条件:上場・大手/東京/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

この表の読み方として、年収の段階は経験年数とともに上がりますが、短い在籍を挟んでも、通算の経験年数は積み上がっています。短期で辞めた会社の期間も、担った仕事の中身を説明できれば、経験として数えられます。ただし、表はモデルによる推定で、個別の会社の等級や提示額を示すものではありません。

注意点として、辞める理由の説明に納得が得られないと、応募先は「同じ理由でまた短期で辞めるのではないか」と考え、責任の大きい上の等級での採用を見送ることがあります。その結果、経験に見合った等級より下で提示されることがあります。

辞める理由の説明が、評価を左右する

短期離職を挟んだ転職では、辞める理由の説明が、等級の判定と提示の位置を左右します。説明の筋が通っていれば、短い在籍は大きな不利になりにくくなります。

理由は、応募先が最も気にするのが、入社後に同じ理由でまた辞めることだからです。採用にはお金と時間がかかり、短期で辞められると、その費用が回収できません。そのため、辞めた理由が本人の選び方の問題なのか、会社の条件の問題なのか、次の会社で同じことが起きないのかを確かめようとします。

説明は、次の3つの要素で組み立てます。

  1. 入社前に聞いていた条件と、実際の違い(事実に沿って簡潔に)
  2. 自分の判断で甘かった点(確認が足りなかったこと)
  3. 次の会社を選ぶために確認していること(同じことを起こさない基準)

この3つをそろえると、辞めた理由が一時的な不満ではなく、次の会社を選ぶ基準がはっきりしていることが伝わります。具体例として、「開発の仕事と聞いて入社したが、実際は運用の仕事が中心だった。入社前に業務の割合を確認しなかったのは自分の判断の甘さだった。今回は、入社後に担う業務の割合と、開発の仕事に移る時期を具体的に確認している」といった説明になります。

注意点として、前の会社を批判する言い方は避けてください。批判の言い方は、応募先に「うちでも同じように言われるのではないか」と思わせます。事実だけを淡々と伝え、自分の判断の部分も認めるほうが、納得を得やすくなります。

職務経歴書に短い在籍を書く

短期で辞めた会社も、職務経歴書には書くのが基本です。書かないと、後で在籍の事実が分かったときに、経歴の信頼性が問われます。

理由は、雇用保険や年金の記録、源泉徴収票の提出などから、在籍の事実が分かることがあるからです。短い在籍を書かずに選考を進め、入社の手続きで判明すると、内定の判断に影響することがあります。書いたうえで説明するほうが、書かないで後から説明を求められるより、評価への影響が小さくなります。

具体的には、短い在籍の会社についても、在籍期間、担当した業務、使った技術を簡潔に書きます。在籍が短くても、担当した業務の中で成果があれば、具体的に書きます。辞めた理由は、職務経歴書では一行程度にとどめ、詳しくは面接で説明する形が一般的です。職務経歴書の書き方は職務経歴書の書き方で年収が変わる理由で整理しています。

注意点として、短い在籍の会社の業務を、実際より大きく書くのは避けてください。在籍期間が短いことは応募先も分かっているため、大きく書くと面接で具体的に聞かれたときに説明が合わなくなります。

直近の年収が高かった場合、低かった場合

直近の会社の年収が、前々職より高かったか低かったかで、再転職の提示年収の考え方が変わります。

直近の会社の年収が高かった場合は、応募先がその水準を基準にするかどうかが焦点になります。直近の会社の提示が、本人の経験に見合ったものであれば、その水準を基準に交渉できます。一方で、直近の会社が特に高い水準で提示していた場合、応募先は前々職の水準に近い額を提示することがあります。この場合、直近の会社で担った役割と実績を具体的に説明し、その水準に見合う経験であることを示すのが大切です。

直近の会社の年収が低かった場合は、前々職の水準を基準にしてもらえるかが焦点になります。年収が下がる転職をして、1年以内に元の水準に戻ろうとする場合は、なぜ一度年収を下げる選択をしたのか、その理由と、今回の転職で何を求めているのかを説明します。年収が下がる転職の考え方は年収が下がる転職を受けてよい条件で扱っています。

注意点として、どちらの場合も、応募先が基準にする年収を自分で決めることはできません。基準にしてほしい年収がある場合は、その根拠となる経験と実績を具体的に示し、交渉の材料にしてください。年収交渉の根拠の組み立て方は年収交渉で通る根拠で整理しています。

短期で辞めるときに失いやすいもの

入社1年以内に辞めると、提示年収とは別に、直近の会社で受け取るはずだったものを失うことがあります。再転職を決める前に、失うものを確認しておきます。

失いやすいのは、次のようなものです。支給日の前に辞めることで受け取れなくなる賞与、在籍期間の条件を満たさずに受け取れない退職金、入社一時金に付いている返還条項の対象期間中の退職による返還、権利が確定する前の株式報酬です。いずれも、辞める時期によって受け取れる額が変わります。

具体的には、入社一時金を受け取っている場合、返還条項の対象期間中に自己都合で辞めると、返還を求められることがあります。入社一時金の見方はサインオンボーナスは年収に含めてよいかで整理しています。賞与の支給日が近い場合は、辞める時期を支給日の後にできるかも検討する価値があります。

注意点として、失うものを避けるために辞める時期を遅らせることが、必ずしも良いとは限りません。心身の負担が大きい場合や、条件が入社前の説明と大きく違う場合は、失うものより、早く動くことのほうが大切なこともあります。

転職活動は在籍中に進めるか

入社1年以内の再転職では、在籍しながら転職活動を進めるか、辞めてから進めるかで、提示年収の交渉のしやすさが変わります。

在籍しながら進める場合は、現在の雇用が続いているため、焦って条件を受け入れる必要がなく、提示年収の交渉をしやすくなります。一方で、短い在籍の中で転職活動をしていることを、面接で説明する必要があります。

辞めてから進める場合は、転職活動に時間を使える一方、収入のない期間が長くなると、条件を妥協しやすくなります。さらに、離職期間が長くなると、その期間についての説明も必要になります。

転職全体の傾向として、転職で年収が増えた人の割合は 60.4%、増えた人の平均増加額は 73.1万円 でした。ただしこれは在籍期間を問わない全体の傾向で、短期離職を挟んだ場合に同じ結果になるとは限りません。短期離職を挟む場合は、条件を妥協しないための時間の余裕をどう確保するかが、提示年収に効きます。求人の状況が厳しい局面での進め方は求人が減る局面で年収を下げずに転職する条件も参考になります。

次の会社で同じことを起こさないための確認

短期離職を挟んだ転職で、次の会社でまた短期で辞めることになると、3社目以降の転職での評価がさらに厳しくなります。次の会社を選ぶときは、前回の短期離職の原因を踏まえて確認します。

理由は、短期離職が続くと、応募先が「この人は長く働かないのではないか」と判断しやすくなるからです。1回の短期離職は説明で補えても、2回続くと、説明の納得を得るのが難しくなります。

具体的には、前回の短期離職の原因が「聞いていた業務と違った」であれば、入社後に担う業務の割合と、配属の決まり方を具体的に確認します。「評価や年収が聞いていた内容と違った」であれば、等級と評価の基準を書面で確認します。「職場の雰囲気が合わなかった」であれば、チームのメンバーと話す機会を求めます。確認の仕方はオファー面談で確認すべき条件で整理しています。

注意点として、確認を重ねても、入社してみないと分からないことは残ります。すべてを確認しようとするより、前回の短期離職の原因になった点に絞って、重点的に確認するほうが現実的です。

応募前に確認する5項目

入社1年以内の再転職を考えるときは、応募の前に次の5項目を確認します。

  1. 直近の会社の条件(月額の給与、賞与の条件、実際の支給額)を分けて書き出す
  2. 前々職の年収と、経歴全体の年収の流れを整理する
  3. 直近の会社で担った役割と成果を、具体的に説明できるようにする
  4. 辞める理由を、事実、自分の判断、次の選び方の3つで説明できるようにする
  5. 辞めることで失う賞与、一時金の返還、株式報酬などを確認する

いずれも、応募先に年収を伝えるときと、面接で説明するときの土台になります。特に4番目の説明は、等級の判定と提示の位置に直接効くため、面接の前に一度書き出しておくと、落ち着いて説明できます。

よくある誤解

「1年以内に辞めると、提示年収は必ず下がる」という見方は正確ではありません。提示年収は等級の判定で決まり、短い在籍があっても、経歴全体で上の等級の役割を担ってきたことを示せれば、年収が上がる転職も可能です。

「短い在籍は職務経歴書に書かないほうがよい」という考えも、後で判明したときの影響を考えると、おすすめできません。書いたうえで簡潔に説明するほうが、評価への影響は小さくなります。

「直近の会社の年収をそのまま伝えればよい」という考えも、在籍が短い場合は不十分です。源泉徴収票が1年分にならないことや、賞与がまだ出ていないことを踏まえて、条件と実際の支給を分けて説明してください。

まとめ

  • 入社1年以内の再転職で基準にされる年収は、直近の会社の年収とは限らず、前々職の年収も見られる
  • 源泉徴収票は在籍期間分しか記載されないため、条件と実際の支給を分けて説明する
  • 提示の位置を決めるのは等級の評価で、辞める理由の説明がその判定を左右する
  • 短い在籍も職務経歴書に書き、担当した業務と辞めた理由を簡潔に示す
  • 辞めることで失う賞与、一時金の返還、株式報酬を、辞める時期を決める前に確認する