データセンターや運用監視センター、24時間動くサービスの運用現場では、深夜やシフトの勤務があるエンジニアの仕事があります。こうした仕事の年収は、日勤の仕事と比べて高いのか低いのか。結論から言うと、深夜・シフト勤務の年収は、深夜割増、夜勤手当、シフト手当を基本給と分けて見て、さらに実際に働いた時間で割った実質時給で比べると、日勤の仕事と正しく比べられます。額面の年収だけで比べると、手当と割増で年収がそろっているのか、基本給の水準から高いのかが分かりません。
この記事は、運用・監視・保守の現場で深夜やシフトの勤務をしているエンジニア、またはそうした求人を検討しているエンジニア向けに、年収の中身の分け方、時間の数え方、実質時給の出し方、日勤へ移るときに減る額、求人で確かめる6項目を整理します。運用の仕事の年収相場そのものはネットワーク・インフラ運用エンジニアの年収相場で扱っています。
結論:年収を4つに分けてから比べる
深夜・シフト勤務の年収を比べるときは、基本給、深夜割増、夜勤やシフトの手当、時間外の賃金の4つに分けてから比べます。4つをまとめた額面の年収だけでは、日勤の仕事と比べたときの差が、どこから来ているのか分からないためです。
理由は、この4つが、それぞれ違う条件で決まるからです。基本給は契約で決まり、勤務の形が変わっても基本的には変わりません。深夜割増は、深夜の時間帯に働いた時間に比例します。夜勤やシフトの手当は、会社が独自に決める額で、勤務の回数に応じて支払われます。時間外の賃金は、決められた時間を超えて働いた分に支払われます。
| 部分 | 何に対して支払われるか | 日勤に移ったとき |
|---|---|---|
| 基本給 | 契約上の職務と等級 | 原則として変わらない |
| 深夜割増 | 深夜の時間帯に働いた時間 | なくなる |
| 夜勤・シフト手当 | 夜勤やシフトの勤務の回数 | なくなる |
| 時間外の賃金 | 決められた時間を超えた労働 | 働き方次第で増減する |
この表の読み方で大切なのは、日勤に移ったときに何が残るかという視点です。深夜割増と夜勤・シフト手当は、深夜やシフトの勤務から外れた時点でなくなります。これらの比重が大きいほど、今の年収は勤務の形に依存していることになります。
具体例として、額面の年収が同じ2人がいたとします。1人は基本給が高く、深夜の勤務が少ない人。もう1人は基本給が低く、深夜割増と夜勤手当で年収をそろえている人です。今の年収は同じでも、日勤に移ったり転職したりしたときに残る年収は、前者のほうが大きくなります。
深夜割増と夜勤手当は別のもの
求人票で「夜勤手当あり」と書かれていても、それが法令に基づく深夜割増を指しているのか、会社独自の手当なのかは分かりません。この2つは性質が違うため、分けて確認します。
深夜割増は、法令で定められた深夜の時間帯に働いた時間に対して、通常の賃金に一定の率以上を上乗せして支払うものです。会社が独自に決めるものではなく、深夜の時間帯に働けば、原則として支払いの対象になります。一方で夜勤手当は、夜勤という勤務そのものに対して、会社が独自に定める手当です。有無も額も会社によって違い、深夜割増とは別に支払われる場合も、支払われない場合もあります。
具体的には、求人票に「夜勤手当あり」とだけ書かれていて、実際には法定の深夜割増だけを指している場合があります。この場合、夜勤という勤務そのものに対する上乗せはありません。反対に、深夜割増に加えて、1回ごとの夜勤手当が別に支払われる会社もあります。この2つを区別しないと、同じ「夜勤手当あり」の求人でも、年収への効き方の違いを見落とします。
注意点として、管理職など立場によって、時間外や休日の賃金の扱いが変わる場合でも、深夜割増の扱いは残ることがあります。自分の立場でどう扱われているかは、給与明細の項目で確認してください。管理職の残業代の扱いは管理職への昇進で残業代がなくなるときの年収の見方で整理しています。
シフトの組み方で、年間の労働時間が変わる
シフト勤務では、1日の労働時間が長い日と休みの日を組み合わせることが多く、週や月の単位で見ると、日勤の仕事と労働時間が違うことがあります。実質時給を比べる前に、年間で何時間働いているかを把握します。
理由は、シフト勤務の多くが、変形労働時間制という仕組みを使っているからです。変形労働時間制は、一定の期間の中で、日ごとや週ごとの労働時間を調整できる制度で、1日の労働時間が長い夜勤と、休みの日を組み合わせるシフトを組みやすくします。厚生労働省の調査では、変形労働時間制がある企業の割合は 60.2%(令和7年(2025年)1月1日現在) で、珍しい仕組みではありません。
具体的には、夜勤の日は1日の拘束時間が長くなり、その後に明けの日と休みの日が続く組み方があります。この場合、夜勤明けの日を休日として数えるかどうかで、年間休日の見え方が変わります。夜勤明けの日は、朝に勤務を終えた日なので、実際に自由に使える時間は休日より短くなります。求人票の年間休日の数字だけで比べると、日勤の仕事との差を小さく見積もることがあります。
注意点として、変形労働時間制でも、決められた期間の枠を超えて働いた時間には、時間外の賃金が発生します。日ごとに残業を数える通常の方法とは計算の仕方が違うため、自分のシフトでどこから時間外になるかを、就業規則と給与明細で確認してください。
実質時給は、年収を年間の労働時間で割って出す
深夜・シフト勤務と日勤の仕事を比べるときは、額面の年収を、実際に働いた年間の労働時間で割った実質時給で比べます。額面の年収が高くても、働いた時間が長ければ、時間あたりの水準では差が縮まります。
比べる基準として、厚生労働省の調査では、情報通信業の週所定労働時間は 39時間02分、労働者1人平均の年間休日総数は 116.6日 です。日勤の仕事の所定の労働時間はおおむねこの水準にあり、深夜・シフト勤務では、これに時間外や、夜勤明けのように自由に使えない時間が加わります。
具体的な手順は次のとおりです。まず直近1年の給与明細から、年間の額面の合計を出します。次に勤務表から、年間の実労働時間の合計を出します。額面の合計を実労働時間で割れば、実質時給が出ます。日勤の仕事の求人と比べる場合は、提示年収を所定の年間労働時間と想定の残業時間の合計で割って、同じ単位にそろえます。年間労働時間での比べ方は年間労働時間で年収を比べる方法で詳しく整理しています。
注意点として、この計算では、夜勤明けの日の疲れや、生活の時間帯がずれることによる負担は数字に表れません。時間あたりの水準がほぼ同じなら、生活への影響をどう考えるかで判断が分かれます。どこまでを負担として考えるかは人によって違うため、数字の比較は判断の土台として使ってください。
手当と割増が年収に占める割合を出す
今の年収のうち、深夜割増と夜勤・シフト手当がどれだけを占めているかを出しておくと、勤務の形が変わったときの影響が分かります。この割合が大きいほど、日勤への移動や転職で年収が下がる幅も大きくなります。
計算は単純です。直近1年の給与明細から、深夜割増、夜勤手当、シフト手当の合計を出し、年間の額面の合計で割ります。月ごとにシフトの数が違う場合は、1年分を合計することで、季節による変動をならせます。
具体例として、同じ年収の2人でも、この割合が小さい人と大きい人では、日勤に移ったときの年収が大きく違います。割合が大きい人は、日勤に移ると年収が大きく下がる一方、割合が小さい人は、基本給の水準が高いため、下がる幅が小さくなります。転職を考える場合も、転職先が同じ形の手当を支払うとは限らないため、手当と割増を除いた部分がどれだけあるかが、交渉の土台になります。
注意点として、統計の給与の数字と比べるときは、その統計が手当や割増を含んでいるかを確認します。たとえば情報通信業の所定内給与額は 406千円/月(令和7年(2025年)) ですが、所定内給与は深夜割増や時間外の賃金を含みません。自分の基本給と毎月決まった手当の合計を、この数字と比べてください。
日勤へ移るときに減る額を見積もる
深夜・シフト勤務から日勤の仕事に移るときは、深夜割増と夜勤・シフト手当の合計が、ほぼそのまま減ると考えて見積もります。基本給が変わらなければ、それ以外の部分は大きく変わらないことが一般的です。
理由は、深夜割増と夜勤・シフト手当が、どちらも勤務の形に連動しているからです。日勤に移れば、深夜の時間帯に働かなくなり、夜勤やシフトの回数もなくなります。時間外の賃金は日勤でも発生するため、働き方によっては増えることもありますが、深夜割増のような上乗せはなくなります。
具体的には、社内で運用から開発や設計の仕事に移る場合、移った直後は年収が下がることがあります。一方で、開発や設計の仕事で経験を積むと、等級が上がって基本給が上がり、数年で元の年収を上回ることもあります。移った直後の下がり幅だけで判断せず、数年後の見通しと合わせて考えてください。年収が一時的に下がる選択の考え方は年収が下がる転職を受けてよい条件で扱っています。
注意点として、日勤に移ると、夜勤明けの時間や生活の時間帯のずれがなくなるため、時間あたりの負担は小さくなります。年収が下がっても、実質時給では大きく変わらないこともあるため、額面だけでなく時間あたりの水準でも見てください。
企業タイプと経験年数で、基本給の水準が変わる
深夜・シフト勤務の年収を比べるときに見落としやすいのが、基本給の水準そのものが、企業タイプと経験年数で大きく変わるという点です。手当と割増で年収をそろえている現場では、基本給の水準が低いことがあります。
診断モデルの推定では、実務3〜5年、東京勤務、スキル中位の条件で、企業タイプだけを変えると次のようになります。
| 企業タイプ | 推定レンジ | レンジの図 |
|---|---|---|
| メガベンチャー・外資 | 604〜709万円 | |
| 上場・大手 | 531〜624万円 | |
| 中小の受託・SIer | 459〜539万円 | |
| スタートアップ | 483〜567万円 | |
| SES | 411〜482万円 |
この表は、深夜割増や夜勤手当を含まない、継続する額面年収の推定です。表の読み方として、自分の手当と割増を除いた年収がどの行の水準に近いかを見ると、基本給の水準が企業タイプの中でどの位置にあるかが分かります。手当と割増を除くと、SESや下請けの水準に近い場合、年収を支えているのは勤務の形であって、基本給の水準ではないことになります。個別の会社の提示額ではないため、実際の判断では手元の給与明細と求人の提示額を使ってください。
注意点として、運用の現場では、元請けか下請けかによっても基本給の水準が変わります。同じ監視や保守の仕事でも、商流の位置で年収が変わる仕組みは一次請けと二次請けで年収が変わる理由で整理しています。
夜勤の経験を評価につなげる
深夜・シフト勤務の経験は、夜勤をこなした年数ではなく、障害にどう対応し、何を改善したかとして説明すると、転職や社内の異動で評価されやすくなります。
理由は、評価する側が知りたいのが、決められた手順をこなす力ではなく、状況を判断して改善を進める力だからです。夜勤の現場では、日中よりも少ない人数で障害に対応することが多く、一次対応の判断を任される場面があります。この経験を、判断と改善の実績として書けるかどうかで、評価が変わります。
具体的には、次のような経験を、数字や具体的な場面とともに書きます。障害の一次対応から原因の切り分けまでを担った経験、同じ障害が繰り返し起きていることに気づいて再発防止を提案した経験、手作業の手順を自動化して夜間の作業を減らした経験、監視の設定を見直して誤った通知を減らした経験などです。これらは、運用の設計や信頼性の改善を担う職種で評価される実績になります。信頼性に責任を持つ職種の年収はSRE・インフラエンジニアの年収相場で扱っています。
注意点として、手順どおりの監視と報告だけを続けている場合は、評価につながる実績が作りにくくなります。改善の提案が業務として認められているか、改善に使える時間があるかは、職場を選ぶときの大切な条件です。
シフト勤務の求人を比べるときの落とし穴
シフト勤務の求人を比べるときは、求人票の年収や年間休日の数字が、どの前提で計算されているかを確かめます。前提がそろっていないと、比べた結果が入社後に変わります。
よくある落とし穴の一つは、提示年収が深夜割増や夜勤手当を含んだ想定額になっている場合です。想定しているシフトの回数を下回ると、年収は提示額に届きません。反対に、提示年収が基本給と賞与だけで、深夜割増や手当が別に支払われる場合は、実際の年収が提示額を上回ります。どちらの前提かを確認しないと、2社の提示を正しく比べられません。
もう一つは、年間休日の数え方です。夜勤明けの日を休日として数えている求人と、数えていない求人では、同じ年間休日の数字でも、実際に自由に使える日数が違います。休日の数だけでなく、シフトの組み方の例を見せてもらい、夜勤明けの日の扱いを確認してください。
注意点として、シフトの人数が少ない現場では、欠員が出たときに急なシフトの変更が起こりやすくなります。シフトを組む人数と、急な変更の頻度も、条件の一部として確認しておくと、入社後の負担を見積もりやすくなります。
転職で年収を維持するための考え方
深夜・シフト勤務から転職するときは、手当と割増を除いた部分で、どれだけの年収を求められるかを先に考えます。転職先が同じ形の手当を支払うとは限らないため、今の年収の総額をそのまま求めると、交渉がかみ合わないことがあります。
転職全体の傾向として、転職で年収が増えた人の割合は 60.4%、増えた人の平均増加額は 73.1万円 でした。ただしこれは転職者全体の傾向で、深夜・シフト勤務から日勤の仕事に移る場合は、手当と割増がなくなる分、額面の年収は下がりやすくなります。
具体的には、現年収を伝えるときに、基本給、賞与、深夜割増、夜勤・シフト手当を分けて説明します。そのうえで、日勤の仕事で求める年収は、手当と割増を除いた部分を基準に、経験と実績でどれだけ上乗せできるかを考えます。現年収の伝え方はエンジニアの転職で現年収をどう申告するかで整理しています。
注意点として、同じ深夜・シフト勤務のある職場に転職する場合は、手当と割増の設計が会社によって違うため、4つの部分を並べて比べる必要があります。夜勤手当の有無や額、シフトの回数の想定を確認しないと、額面の年収だけでは比べられません。
よくある誤解
「夜勤がある仕事は年収が高い」という見方は、基本給の水準を見ないと成り立ちません。深夜割増と手当の分だけ額面が高くなっていても、基本給が低く、時間あたりの水準では日勤の仕事と変わらないこともあります。
「変形労働時間制だから残業代は出ない」という理解も誤りです。変形労働時間制でも、決められた期間の枠を超えて働いた時間には、時間外の賃金が発生します。計算の方法が通常と違うだけです。
「夜勤の経験は評価されない」という見方も一面的です。夜勤をこなした年数そのものは評価されにくいものの、障害への対応や改善の実績は、運用の設計や信頼性の改善を担う職種で評価されます。経験の書き方次第で、評価は変わります。
求人とオファーで確かめる6項目
深夜・シフト勤務のある求人を検討するときは、次の6項目を確認します。
- 提示年収が、深夜割増と夜勤・シフト手当を含んだ想定額か、含まない額か
- 夜勤手当が法定の深夜割増とは別に支払われるか、1回あたりの額はいくらか
- シフトの組み方の例と、月あたりの夜勤の回数の想定
- 変形労働時間制の単位の期間と、時間外になる時間の数え方
- 夜勤明けの日を年間休日に数えているか
- 日勤の仕事への異動の実績と、異動したときの基本給の扱い
いずれもオファーの段階で採用担当者に聞ける項目です。回答があいまいな場合は、直近の実績の数字(月あたりの夜勤の回数や、深夜割増と手当の平均額)を聞きます。口頭の説明だけで判断せず、労働条件通知書や就業規則の記載で確認してください。オファーで確認すべき条件全体はオファー面談で確認すべき条件にまとめています。
まとめ
- 深夜・シフト勤務の年収は、基本給、深夜割増、夜勤・シフト手当、時間外の賃金の4つに分けて見る
- 深夜割増は法令に基づく上乗せで、夜勤手当は会社が独自に定める手当なので、別に確認する
- 日勤の仕事とは、年収を年間の実労働時間で割った実質時給でも比べる
- 日勤へ移ると、深夜割増と夜勤・シフト手当の合計がほぼそのまま減る
- 夜勤の経験は、障害への対応と改善の実績として説明すると評価につながる