週4勤務や短時間正社員に切り替えたときの年収は、所定労働時間の比率でおおむね按分されます。週5日を週4日にすれば給与もおよそ5分の4に近づく、という理解でまず大きくは外れません。

分かれるのはその先です。同じ「週4」でも、時給に直すと以前とほとんど変わらない人と、明確に下がる人がいます。分かれ目は、賞与と手当がどこまで按分されるか、等級と評価が据え置かれないか、そして元の年収に残業代がどれだけ含まれていたかの3点です。

週4勤務で年収はどれくらい下がるのか

出発点は、フルタイムのときの水準に所定労働時間の比率を掛けた金額です。まず自分のフルタイム時点の位置を押さえます。実務3〜5年・東京勤務・上場企業・スキル中位という条件なら、推定はこの範囲になります。

531〜624万円

このレンジに、週5日のうち何日働くかの比率を掛けたものが、週4勤務に切り替えたあとの目安になります。理由は単純で、月給制の給与は所定労働時間に対して支払われる建て付けだからです。労働時間が減れば、その分だけ支払いの根拠も減ります。

ただし、この計算がそのまま当てはまるのは基本給だけです。会社が支払っている金額のうち、基本給以外の部分がどう扱われるかは制度によって変わります。住宅手当のように在籍していれば全額支給される手当もあれば、賞与のように評価と在籍期間の両方で決まるものもあります。同じ比率で一律に減るわけではない、というのが実際のところです。

時給換算で比べると何が見えるか

年収だけを見ていると、短縮は常に損に見えます。そこで、年収を年間の所定労働時間で割った時給に直して比べます。所定労働時間が減った分だけ年収も減っているなら、時給は変わりません。時給が下がっているときだけ、時間の短縮とは別の理由で条件が悪くなっていると判断できます。

比較の土台には、残業代と賞与を含まない所定内の給与を使うほうが実態に合います。情報通信業の所定内給与額は月額で 406千円/月(令和7年(2025年))、全産業の一般労働者では 340.6千円/月 です。どちらも残業代を含まない数字なので、労働時間あたりの水準を比べる土台になります。

具体的には、まず現在の年収から残業代と賞与を引き、所定内の年額を出します。次にそれを年間の所定労働時間で割ります。短縮後についても同じ手順で計算し、2つの時給を並べます。ここで差が出るなら、その差額が短縮によって余分に失っている部分です。みなし残業が含まれている場合の分解の仕方はみなし残業を実質時給に換算する方法で扱っています。

注意点として、この時給比較は手取りの比較ではありません。社会保険料や税の負担は収入水準で変わるため、額面の時給が同じでも手取りの比率は一致しないことがあります。時給換算は「会社が労働時間あたりいくら払っているか」を見るための道具であり、生活設計の数字はそれとは別に計算する必要があります。

短時間正社員と週4勤務は別の制度

呼び方が近いため混同されますが、両者は減らす対象が違います。短時間正社員は1日の所定労働時間を短くする形が中心で、週4勤務は勤務日数そのものを減らす形です。年収の減り方は似ていても、働いた実感と評価のされ方は変わります。

日数を減らす週4勤務では、稼働しない曜日がまるごと空きます。定例会議や障害対応の当番から外れやすく、その曜日に発生した意思決定には関われません。一方、1日の時間を短くする形では、毎日チームにいるため会議には出られますが、実装に使える連続した時間が短くなります。設計や調査のように、まとまった時間を要する仕事ほど影響を受けます。

どちらが合うかは、担当している仕事の性質で決まります。レビューや相談の比重が高い役割なら毎日短く働く形が噛み合い、一人で進める実装が中心なら日数を減らして稼働日の密度を上げるほうが成果を出しやすいことがあります。制度名で選ばず、契約書の所定労働時間と勤務日の欄がどうなるかで判断してください。

賞与と手当は按分されるとは限らない

年収の下げ幅が想定を超えるとき、原因の多くは基本給ではなく賞与です。賞与は評価と在籍期間で決まる会社が多く、支給率の算定に所定労働時間を掛けるかどうかは制度によって違います。労働時間の比率をそのまま掛ける会社もあれば、評価そのものを下げて結果的に比率以上に減らす会社もあります。

手当も同様です。通勤手当のように実費の性質を持つものは日数に連動しますが、資格手当や役職手当は在籍と役割に対して支払われるため、時間が短くなっても減らないことがあります。逆に、みなし残業として固定的に支払われていた部分は、残業を前提としない働き方に変えた時点で支給の根拠を失います。

確認すべきは、賞与の算定式に労働時間の係数が入っているか、入っているならその係数が所定労働時間の比率と一致しているかです。就業規則や賃金規程に書かれていないなら、その場で人事に確認します。口頭で「あまり変わりません」と言われた内容は、翌年の担当者が変われば引き継がれません。 賞与比率の高い会社ほどこの確認の重みが増します。会社ごとの賞与の位置づけは賞与比率が高い会社と低い会社の違いで整理しています。

等級と評価が据え置かれないかを確認する

短縮を選んだ年に年収が下がることは、時間が減っている以上ある程度は避けられません。長期的に効くのはそこではなく、等級と評価が止まるかどうかです。等級が据え置かれると、その後の昇給と昇格の起点が動かなくなり、フルタイムに戻ったあとの水準にも残ります。

情報通信業では、昇給の内容が業績評価などによる企業の割合は 85.9% です。自動的に上がる仕組みではなく、評価を通じて上がる会社が大半だという意味になります。評価対象から外れる、あるいは「時間が短いから」という理由だけで評価が一段下がる運用になっていると、昇給の機会そのものを毎年失います。

その一年で失う額は小さく見えます。情報通信業の1人平均賃金の改定率は 3.9%(令和7年(2025年)) でした。単年では大きな数字に見えませんが、据え置きが数年続けば、戻ったときの起点が同期と離れます。等級制度の仕組みは等級・グレード制度と昇格の条件で扱っています。

確認の仕方は具体的にします。短時間勤務者が評価対象に含まれるか、評価は目標の絶対量で見るのか時間あたりの成果で見るのか、昇格の要件に勤務時間の条件が入っていないか。この3点は、制度として答えが決まっているはずの質問です。答えが出てこない場合は、運用で決めていることになります。

残業込みの年収から減る人は下げ幅が大きい

同じ週4勤務でも、切り替え前の働き方によって体感の下げ幅は大きく変わります。残業が多かった人ほど、下げ幅は所定労働時間の比率より大きくなります。残業代がまず全部消え、そのうえで所定内の給与が按分されるためです。

たとえば、フルタイム時代の年収の一定部分が残業代で構成されていた場合、週4に切り替えた時点でその部分はゼロになります。所定内の給与は労働時間の比率で減るだけですが、合計で見ると比率以上に落ちます。これは制度が不利なのではなく、比較の基準に残業代を含めていたことによる差です。

だからこそ、判断の前に自分の年収を所定内と残業代に分けておく必要があります。分けたうえで所定内どうしを比べれば、短縮そのものによる減少と、残業がなくなることによる減少を切り分けられます。前者は時間を売っていないだけですが、後者は生活設計の前提が変わる話なので、扱いが違います。

社会保険と将来の受給への影響

給与が下がると、社会保険の標準報酬月額も下がります。標準報酬月額は厚生年金や健康保険の給付額の計算に使われるため、在職中の手取りだけでなく、将来受け取る年金額や、傷病手当金のような給付の水準にも影響します。短縮の期間が長くなるほど、この影響は積み上がります。

ただし、影響の大きさは加入期間全体の中での位置づけで決まるため、一律には言えません。何年短縮するのか、その前後の報酬がどうなるのかによって結果が変わります。個別の見込み額は年金事務所や社会保険労務士に確認してください。 この記事の範囲では、給与額だけでなく将来の給付にも波及する項目がある、という点までにとどめます。

また、所定労働時間の短縮の程度によっては、社会保険の被保険者としての扱いが変わる場合があります。会社の規模や契約内容で条件が異なるため、短縮後の所定労働時間で加入がどうなるかは、契約を結ぶ前に会社の担当部署へ確認しておくのが安全です。

フリーランスの週4案件と比べるとどうか

週4で働きたいとき、正社員の制度を使う以外に、業務委託で週4稼働の案件を受ける選択肢もあります。フリーランス案件の月額平均単価は 78.3万円/月(2025年12月度)、リモート案件では 80.2万円/月 です。この数字は週5稼働を前提とした掲載単価なので、週4であれば単価も按分されるのが通例です。

額面だけを並べると業務委託が高く見えますが、比較の条件が揃っていません。掲載単価には社会保険料の会社負担分、有給休暇、賞与、退職給付が含まれていません。加えて、稼働率が100%である保証もありません。契約が切れた月の収入はゼロになり、その分は平均単価に反映されていません。両者の比べ方はフリーランスと正社員の年収比較で扱っています。

正社員の短時間勤務と業務委託の週4稼働は、収入の水準ではなく、変動を誰が引き受けるかで違います。前者は会社が変動を吸収し、その対価として単価が抑えられます。後者は自分で変動を引き受け、その分だけ単価が高く出ます。事情があって時間を減らす局面では、収入の安定性そのものが重要な条件になることが多く、単価の高さだけで選ぶと前提を外します。

正社員のまま短くするか、雇用形態ごと変えるか

時間を減らす相談をしたときに、契約社員やパートタイムへの変更を提案されることがあります。この場合、減るのは労働時間だけではありません。給与所得者全体で見ると、正規雇用の平均給与は 545万円、非正規雇用は 206万円 です。労働時間の差を含んだ数字ではありますが、差の大きさは無視できません。

短時間正社員は、正社員の身分のまま所定労働時間だけを短くする仕組みです。等級や賞与の制度は原則として正社員のものが適用され、フルタイムへ戻る道も制度上つながっています。一方、雇用形態を変えると、適用される賃金テーブルそのものが変わることがあり、時間を戻しても元の水準に戻らない場合があります。

提案を受けたときは、変更後に適用される制度がどれなのかを名指しで確認します。就業規則のどの章が適用されるのか、賞与と退職給付の対象に残るのか、等級はどう扱われるのか。この確認をしないまま合意すると、時間の比率以上に条件が下がります。雇用形態による違いは正社員と契約社員の年収差で詳しく扱っています。

フルタイムに戻る道筋を先に確認する

短縮を選ぶ時点では、戻ることまで考える余裕がないことが多いものです。それでも、復帰の条件は短縮を始める前にしか交渉できません。始めたあとは、こちらが制度に合わせる側になります。

確認しておきたいのは、復帰を申し出る時期と方法、復帰時の等級の扱い、そして復帰後の担当範囲です。就業規則に書かれていれば、それが答えです。書かれていない場合は運用で決まるため、上長が変われば結論も変わる可能性があります。書面で残せる範囲を確認しておくと、戻る段階での交渉が短く済みます。

育児や介護のように、期間が読みにくい事情で短縮する場合はとくにそうです。復帰の見通しと年収の戻し方については育休・時短勤務からの復帰後に年収を戻す手順介護と両立しながら年収を落とさない働き方で扱っています。

契約を変える前に確認する順序

確認は思いついた順ではなく、後戻りできない項目から進めます。次の順で見ると、判断に必要な材料が揃います。

  1. 契約書の所定労働時間と勤務日がどう変わるか
  2. 基本給の按分方法と、その根拠が賃金規程のどこにあるか
  3. 賞与の算定式に労働時間の係数が入るか、入るなら比率と一致するか
  4. 手当のうち、減るもの・変わらないもの・支給根拠を失うものの内訳
  5. 等級が据え置かれるか、評価の対象と基準がどう変わるか
  6. 社会保険の加入と標準報酬月額がどうなるか
  7. フルタイムへ戻る条件と、そのときの等級の扱い

上から4つは、その年の受取額を決める項目です。下の3つは、数年後の水準と復帰後の位置を決める項目にあたります。目先の減額よりも、5番目以降のほうが最終的な影響は大きくなります。 減額の幅だけで判断すると、影響の大きいほうを見落とします。

この順で確認しても答えが得られない項目があれば、その項目は運用に依存していると考えます。運用に依存する部分が多い会社では、短縮した後の条件が担当者や上長の判断で変わりうるということです。それ自体が悪いとは限りませんが、想定しておく必要はあります。

自分の条件で数字を出してから決める

一般論としての下げ幅ではなく、自分の条件で計算した数字を持って相談するほうが話が早く進みます。必要なのは、フルタイム時点の所定内年収、年間の所定労働時間、賞与の実績、そして短縮後に適用される制度の内容です。これだけあれば、時給換算での比較まで自分で出せます。

そのうえで、短縮によって失う額と、時間を確保することで得られるものを並べます。金額は計算できますが、時間の価値は本人にしか評価できません。判断に必要なのは、どちらが得かの結論ではなく、失う額を正確に把握したうえで選ぶことです。

自分の現在地が分からないときは、条件を揃えた推定レンジから始めるのが手早い方法です。経験年数・企業タイプ・勤務地・スキルの4軸で見た水準が分かれば、短縮後の目安も比率を掛けるだけで出せます。

まとめ

  • 週4勤務・短時間正社員の年収は、基本給については所定労働時間の比率でおおむね按分される
  • 時給換算で下がるのは、賞与や手当が比率以上に削られる場合と、等級・評価が据え置かれる場合
  • 残業代を含んだ年収を基準にすると下げ幅を過大に見積もる。所定内どうしで比べる
  • 契約前に確認する優先順位は、その年の減額よりも等級・社会保険・復帰条件のほうが高い