実務5年目、6年目と進んでいるのに、年収がほとんど変わらない。真面目に働いているし、任された仕事は終わらせている。それでも上がらない。
この状態にはいくつかの典型的な型があり、型によって打ち手がまったく違います。 見誤ると、努力が結果に変換されません。
前提:会社は「頑張り」に払っていない
まずここが出発点です。給与は労働時間や努力量ではなく、その人がいなくなったときに困る度合いで決まります。
この前提から見ると、年収が止まる原因は4つに分類できます。
型1:5年目と同じ仕事を続けている
最も多い型です。実装のスピードは上がり、バグも減った。しかし任されている判断の範囲が変わっていない。
3年目も6年目も「決まった仕様を実装する」役割のままなら、会社から見た価値は同じです。払う額を増やす理由がありません。
推定レンジで見ると、この差ははっきり出ます。
| 実務経験 | 推定レンジ | レンジの図 |
|---|---|---|
| 未経験 | 340〜399万円 | |
| 1年未満 | 383〜449万円 | |
| 1〜2年 | 425〜499万円 | |
| 3〜5年 | 531〜624万円 | |
| 6〜9年 | 638〜748万円 | |
| 10年以上 | 723〜848万円 |
1〜2年(462万円)から3〜5年(578万円)への116万円は、年数が増えたことではなく、判断の範囲が変わったことに対する対価です。年数だけ進んで役割が変わらなければ、462万円の帯に留まります。
判別の仕方
「自分が担当している範囲で、仕様の曖昧さを誰が潰しているか」
自分でないなら、まだ実装者の位置にいます。
打ち手
次の案件で、仕様を決める側に入ることです。「これはどちらの挙動が正しいですか」と聞く側から、「こうすべきだと思いますが、問題ありますか」と提案する側に変える。この1歩が等級を動かします。
型2:会社の給与テーブルの上限に当たっている
本人の問題ではなく、構造の問題です。
| 企業タイプ | 推定レンジ | レンジの図 |
|---|---|---|
| メガベンチャー・外資 | 604〜709万円 | |
| 上場・大手 | 531〜624万円 | |
| 中小の受託・SIer | 459〜539万円 | |
| スタートアップ | 483〜567万円 | |
| SES | 411〜482万円 |
同じ3〜5年でも、SES(446万円)と上場・大手(578万円)で132万円、メガベンチャー・外資(656万円)まで見れば210万円の差があります。
SESや中小の受託で頭打ちになっている場合、社内でどれだけ評価されてもテーブルの上限は超えられません。 この型で必要なのは努力ではなく移動です。
判別の仕方
- 自分の等級の上限額を知っているか(知らないなら、まず聞く)
- 直近3年で、同じ等級の人が何%上がったか
- 一番給与の高いエンジニアがいくらもらっているか(そこが会社の天井)
打ち手
移動です。ただし移った先で通用する必要があるので、順番としては「実力を確かめる → 足りない部分を埋める → 動く」になります。
型3:評価される仕事をしていない
障害対応、他人のコードの尻拭い、社内の面倒な調整。誰かがやらないと回らないが、評価制度の項目に入っていない仕事があります。
これらを引き受けるほど時間が奪われ、評価対象の成果を出す余力がなくなる。結果、「頼りにされているのに評価されない人」ができあがります。
打ち手:作業を仕組みに変える
引き受けるのをやめる必要はありません。評価される形に変換します。
| やったこと | 変換後 |
|---|---|
| 障害対応した | 原因と再発防止の手順をドキュメント化し、監視を追加した |
| 他人のコードを直した | 同じ間違いを防ぐレビュー基準/Lintルールを追加した |
| 若手の質問に答えた | 同じ質問が出ないようオンボーディング資料を整備した |
| 手作業で復旧した | 復旧をスクリプト化し、次は誰でも実行できるようにした |
左は「その人が頑張った」で終わりますが、右は組織に残る成果なので評価項目に載ります。しかも次の転職時にそのまま実績として書けます。
型4:市場と比べていない
社内でしか比べていない状態です。同僚と同じくらいなら妥当だと感じますが、その会社全体が市場より低いことがあります。
これは最も自覚しにくい型です。社内の空気は正常に見えるので、外に出て初めて分かります。
参考として、全職種の平均は 429万円、ITエンジニアは 469万円、年代別では30代 454万円、40代 517万円 です。ただしこれらは平均であって、条件を揃えた比較ではありません(平均年収の読み方)。
分布で見ると、国税庁の調査では男性で最も人数が多いのは400万円超500万円以下の層で、構成比 16.9% です。正規雇用の平均は 545万円。自分がどのあたりの山にいるかは、平均より分布のほうが分かりやすくなります。
動かなくても、市場価格は分かる
転職せずに市場価格を知る方法はあります。実績データでは、転職で年収が増加した人の割合は 60.4%、増加した人の平均増加額は 73.1万円 でした。4割は増えていないので、動けば上がるという話ではありません。だからこそ、動く前に自分の価格を確認する価値があります。
打ち手
スカウトサービスに登録して、提示される金額を見ます。転職しなくても構いません。市場が自分にいくら出すかを知ること自体が目的です。
型を見誤ると、努力が無駄になる
自分の型を見分ける2つの質問
型は次の2つで切り分けられます。
質問1:仕様の曖昧さを自分で潰しているか
- いいえ → 型1。役割を変えるのが先
- はい → 質問2へ
質問2:自分の実力は、いまの会社の給与水準に見合っているか
- 実力のほうが上 → 型2または型4。移動を検討する
- 見合っている → 型3の可能性。評価される形に変換できていないか確認する
質問2が難しいところで、自己評価は当てになりません。「分かっているつもりで説明できない」が普通に起こります。年数は判断材料になりません。年数は「何年その場にいたか」であって、「何ができるか」ではないからです。
まとめ
- 給与は努力量ではなく、代わりのいなさで決まる
- 型1(役割が変わっていない)・型2(テーブルの上限)・型3(評価されない仕事)・型4(市場を知らない)
- 型2なら勉強では動かない。型1なら転職しても同じ位置に着地する
- 先に原因の型を特定する。そのために実力の現在地を客観的に測る