フルリモートで働くと年収は下がるのか。この質問には、業務委託と正社員で違う答えが出ます。

まず、よく引き合いに出される2つの事実が食い違って見えます。

  • 勤務地によって給与を変える企業がある(リモートなら地方水準にする、など)
  • リモート案件のほうが単価が高いというデータがある

順に見ていきます。

業務委託ではリモートのほうが高い

フリーランス案件の月額平均単価を見ると、リモートが常駐を上回っています。

リモート案件の月額平均単価

80.2万円/月

2025年12月度/『フリーランススタート』定点調査レポート(2025年12月度)

掲載比率42.4%

案件形態 月額平均単価
リモート 80.2万円/月
常駐 76.6万円/月
全体 78.3万円/月

差は月3.6万円。年換算で43万円です。掲載案件のうちリモートの比率は 42.4%(調査対象 474,988件)。

なぜリモートのほうが高いのか

理由は2つあります。

1つ目は、募集範囲が広がる代わりに要求水準が上がるから。 リモート可の案件は全国から応募できますが、発注側はオンボーディングや進捗管理のコストを負います。そのぶん、最初から一人で動ける人にしか出せません。 母数が絞られるので単価は上がります。

2つ目は、単価の高い職種ほどリモート化しやすいから。 SREの月額平均は 93.5万円/月、最高単価は 225万円/月(PM職)ですが、こうした役割は物理的な立ち会いを必要としません。

正社員は会社の制度で3パターンに分かれる

一方、正社員の場合は会社の給与制度に依存します。

パターン1:全国一律型

勤務地に関わらず同じ給与テーブルを適用します。エンジニアの採用競争が地域を越えて起きるため、この形を取る企業が増えました。地方在住者にとっては最も有利です。

パターン2:勤務地連動型

住んでいる地域の水準に合わせて調整します。全産業で見れば地域差は実在するので、制度としては筋が通っています。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、東京都の所定内給与額が 403.7千円/月、全国計が 330.4千円/月、最も低い県が 259.9千円/月 です。全国計を上回ったのは 4都府県 だけでした。

この差をそのまま反映する会社なら、リモートで地方に住んだ時点で下がります。

パターン3:手当調整型

基本給は一律にしつつ、通勤手当や都市手当の有無で差をつける形です。差は小さく収まります。

当サイトの推定では

勤務地係数は、全産業の統計をそのまま使わず、IT職の実態に合わせて東京寄りに圧縮しています。実務3〜5年/上場・大手/スキル中位で、勤務地だけを動かすとこうなります。

勤務地推定レンジレンジの図
東京531〜624万円
大阪・名古屋・福岡468〜549万円
その他の地域441〜518万円
フルリモート510〜599万円
条件:3〜5年/上場・大手/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

フルリモート(554万円)は東京勤務(578万円)をわずかに下回る位置です。全国一律型と勤務地連動型が混在している現状を、平均的に見た値になります。全国一律の会社に所属すれば、実際には東京と同額です。

地域差の詳細は勤務地別の記事で扱っています。

金額より影響が大きいのは「評価の見えにくさ」

実務上、単価や給与テーブルより効いてくるのがこちらです。

出社していれば、困っている人を助けた、障害対応で残った、若手の相談に乗った、といった行動が自然に目に入ります。リモートではこれらが記録に残らず、成果物だけが評価対象になります。

そして評価されない仕事を抱え込むと、年収が止まります(年収が止まる4つの型)。リモートはこの型に入りやすい環境だということです。

対策:やったことを残す形に変える

リモートで消えやすい貢献 残る形に変える
障害対応で夜中に対応した 原因と再発防止をドキュメント化し、監視を追加する
同僚のコードの問題を口頭で指摘した レビューコメントとして残し、Lintルールにする
後輩の質問に個別に答えた スレッドに残し、オンボーディング資料に取り込む
手作業で復旧した スクリプト化して誰でも実行できるようにする

これは評価のためだけでなく、そのまま次の転職時の実績になります。

リモート前提で選考を受けるときの注意

リモート採用の選考基準は、対面採用より厳しくなる傾向があります。 監督コストを払えない分、最初から自走できる水準が求められるためです。

具体的には、次のような点が見られます。

  • 質問の解像度(曖昧な質問しかできない人はリモートで詰まる)
  • 進捗を自分から出せるか
  • テキストで技術的な説明ができるか
  • 既存コードを読んで判断できるか

最後の項目は、企業タイプを問わず効いてきます。同じ3〜5年でもスキルの水準で121万円の差がつくので、ここが弱いとリモート案件では特に不利になります。

判断の順番

  • 業務委託なら — リモートのほうが単価が高い傾向がある。積極的に狙ってよい
  • 正社員なら — 会社の制度による。選考で給与テーブルの地域差を確認する
  • どちらでも — 評価が成果物に寄る。記録に残す習慣が必須

まとめ

  • 業務委託ではリモートが常駐を月3.6万円上回る(80.2万円 対 76.6万円)
  • 正社員は全国一律・勤務地連動・手当調整の3パターン。選考で確認できる
  • 当サイトの推定ではフルリモートは東京のわずか下(554万円 対 578万円)
  • 金額より、評価が見えにくくなることのほうが長期的な影響は大きい