20代で「自分の年収は低いのでは」と感じたとき、年代平均だけを見ると判断を誤ります。20代の平均年収は 365万円、ITエンジニア全体は 469万円 ですが、両者は母集団が違います。前者にはすべての職種が、後者には幅広い年代と役割が含まれます。

大切なのは、年齢ではなく同じ条件で比べることです。

年収を分ける5つの条件

1. 実務経験年数

20代前半でも学生時代から開発を続けた人と、20代後半で未経験入社した人では、任せられる仕事が違います。モデル上の経験年数別レンジも、年齢ではなく実務の期間で変わります。

実務経験推定レンジレンジの図
未経験340〜399万円
1年未満383〜449万円
1〜2年425〜499万円
3〜5年531〜624万円
6〜9年638〜748万円
10年以上723〜848万円
条件:上場・大手/東京/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

ただし、在籍年数をそのまま実務経験と数えないことが重要です。テスト実行だけを3年続けた場合と、設計から運用まで担当した3年は、選考で同じ評価にはなりません。

2. 企業タイプ

同じコードを書いていても、会社の売上構造と給与テーブルで上限が変わります。

企業タイプ推定レンジレンジの図
メガベンチャー・外資604〜709万円
上場・大手531〜624万円
中小の受託・SIer459〜539万円
スタートアップ483〜567万円
SES411〜482万円
条件:3〜5年/東京/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

若いうちは「どこでも経験を積めば同じ」と考えがちですが、レビューの質、任される工程、昇給幅は会社によって異なります。求人票の初年度だけでなく、3年後の等級と上限も確認します。

3. 勤務地と働き方

東京の給与水準が高いことは全職種の統計にも表れています。東京都の所定内給与額は 403.7千円/月、全国計は 330.4千円/月 です。ただしエンジニアはリモート採用や全国一律テーブルもあるため、居住地だけで決めつけず、勤務地手当や出社頻度まで比較します。

4. コードを読む力

若手の市場価値は、扱えるフレームワークの数よりも、既存コードを安全に変更できるかで分かれます。

  • 不具合の原因を切り分けられる
  • 処理量が増えたときのボトルネックを説明できる
  • レビューで変更の影響範囲を指摘できる

これらは別の会社でも再現できるため、転職時の評価につながります。

5. 担当範囲

「指示された実装を終える」から、「曖昧な仕様を整理して提案する」へ移ると評価が変わります。職務経歴書では作業量ではなく、どの判断を任され、何を改善したかを書きます。

20代前半と後半では、会社から見られる点が変わる

同じ20代でも、応募先が想定する採用理由は同じではありません。

段階 採用側が確認すること 職務経歴書で示すこと
未経験〜実務1年未満 学習を継続できるか、仕事の基本動作があるか 学習期間、成果物、質問と改善の仕方
実務1〜2年 一人で小さな変更を完了できるか 担当範囲、レビューで直した点、テスト方法
実務3〜5年 曖昧な要件を整理し、品質へ責任を持てるか 設計判断、障害対応、性能改善、周囲への影響

20代前半は「これから伸びるか」を含めて採用されやすい一方、後半になるほど「すでに何を任せられるか」の比重が上がります。年齢で不利になるという意味ではありません。企業が教育コスト込みで採るのか、即戦力の役割を埋めるために採るのかが変わるということです。

そのため、20代後半で職務経歴書を学習内容だけで埋めると、実務で得た価値が見えません。使った技術より、要件をどう読み、何を判断し、リリース後までどう確認したかを前に出します。

「年収が低い」と判断できる4つのサイン

平均未満であることだけでは、転職すべきとは限りません。次のサインが複数重なっているかを見ます。

同じ役割の求人より明らかに条件が低い

求人を5〜10件集め、経験年数、勤務地、会社タイプ、必須スキルを揃えて比較します。自分より広い責任を求める求人と比べても意味がありません。条件を揃えた求人で差が続くなら、給与テーブルの問題が疑われます。

昇給条件を説明してもらえない

「頑張れば上がる」「次の評価で検討する」だけで、必要な成果や等級が示されない状態です。上司にも制度が分からない場合、本人の努力と給与が結びつきません。

責任だけ増えて等級が変わらない

後輩のレビュー、障害対応、顧客との調整を任されているのに、評価上は入社時と同じ役割のままなら、実態と処遇がずれています。追加された責任を一覧にし、等級基準との対応を確認します。

市場で使えない作業に時間が偏っている

社内だけで使う手順の反復や、判断を伴わない作業が大半を占める状態です。給与が低いだけでなく、次の選択肢を作る経験も増えないため、20代では特に影響が大きくなります。

年収アップにつながる実績の作り方

転職活動を始める前に、現職で次のうち一つを完了させると説明材料になります。

  1. 不具合を減らす — よく起きる原因を特定し、テストや監視で再発を防ぐ
  2. 時間を短くする — 手作業を自動化し、変更前後を同じ方法で測る
  3. 仕様の穴を潰す — 曖昧な条件を洗い出し、関係者の合意を取る
  4. レビューを改善する — 指摘のばらつきをルールやチェックへ変える
  5. 引き継げる状態にする — 自分しか知らない手順を文書と仕組みに変える

成果は「何をしたか」だけでなく、問題、判断、結果の3点で記録します。数値化できない場合も、「誰が困っていたか」「どのリスクが消えたか」「誰でも再現できるようになったか」で効果を説明できます。

転職・社内昇給・学習のどれを選ぶか

原因 優先する行動
給与テーブルの上限が低い 同じ経験を高く評価する会社を探す
次の役割に必要なスキルが不足 現職で小さな責任を取り、実績を作る
成果はあるが評価へ伝わっていない 等級基準に沿って評価面談を準備する
仕事内容と目指す方向が違う 学習だけでなく、担当変更や転職で実務へ移す

学習は目的ではなく、不足している役割を取る手段です。資格や教材を増やす前に、次の求人が何を必須としているか、その要件を現職で証明できないかを確認します。

今の会社に残るかを判断する3問

  1. 半年前より、自分で決められる範囲は増えたか
  2. 一段上の等級に必要な条件を上司から説明してもらえるか
  3. その等級に実際に昇格した人がいるか

3つとも曖昧なら、努力が給与に変換される道筋も曖昧です。すぐ退職を決める必要はありませんが、社外の求人と比較し始める合図になります。

20代エンジニアの1年間ロードマップ

  • 1か月目:現年収、残業、担当範囲を整理し、同条件の求人を10件保存する
  • 2〜3か月目:求人の共通要件から、足りない実績を一つ選ぶ
  • 4〜6か月目:現職で改善を完了し、判断と結果を記録する
  • 7か月目:職務経歴書を更新し、カジュアル面談で市場の反応を確かめる
  • 8〜10か月目:現職の昇格可能性と転職先の条件を比較する
  • 11〜12か月目:残留、異動、転職のどれが次の役割につながるかを決める

途中で条件が改善したら、転職活動を続ける義務はありません。目的は退職することではなく、経験と待遇が適切に積み上がる場所を選ぶことです。

状況別に見る、20代の判断例

年収は低いが、設計とレビューを任され始めた

すぐに移るより、担当範囲が変わった証拠を一つ完成させる選択があります。ただし「経験になるから」と無期限に低い待遇を受け入れず、次回評価の時期と昇格条件を合意します。期限までに扱いが変わらなければ、その実績を持って社外と比較します。

年収は平均付近だが、テスト実行しか任されない

短期の給与だけなら問題がなくても、次の役割へ進む材料が増えません。開発や自動化へ担当を広げられるか相談し、機会がなければ異動や転職を検討します。20代では、現在の額と同じくらい経験の蓄積速度が重要です。

高い年収を提示されたが、固定残業が多い

額面ではなく、基本給、対象時間、超過分の支払い、実際の残業を確認します。学習や休息を失う働き方なら、数年後の市場価値にも影響します。提示額だけでなく実質時給と継続可能性を比べます。

未経験分野へ移りたい

現在の経験を捨てず、共通する能力を探します。フロントエンドからバックエンドなら、要件整理、API利用、エラー処理、テストは転用できます。学習だけで応募するより、現職の関連タスクや小さな成果物で新しい領域との接点を作ります。

職務経歴書に書く一文の型

「技術名+開発したもの」で終わらせず、次の型を使います。

○○という問題に対し、△△の制約を踏まえて□□を提案・実装し、チームが◇◇できる状態にした。

たとえば「Reactで管理画面を開発」ではなく、「担当者ごとに異なっていた入力手順を整理し、共通の検証処理を設計して、追加画面でも同じルールを再利用できる状態にした」とします。成果を数字で出せなくても、変更前後の違いは伝えられます。

この形式で3件書ければ、単なる若手ではなく、問題を見つけて改善できる人として説明できます。

まずは経験年数別の年収相場を確認し、自分のコード読解力を診断して、比較の基準を作ってください。