PHPエンジニアの年収は、PHPの経験年数だけでは決まりません。結論から言うと、案件を次々に納める受託の仕事か、同じサービスを長く育てる自社サービスの仕事かで、経験の積み上がり方が変わり、その結果として年収の伸び方が変わります。PHPは、Webサイトの制作、業務のシステム、ECサイト、利用者の多いWebサービスまで、Webのさまざまな場面で使われています。入り口が広い分、同じ「PHP経験5年」でも、積み上がった経験の中身には大きな差があります。

本記事では、PHPエンジニアだけの平均年収という根拠の弱い数字は使いません。当サイトの推定モデルで条件を揃え、受託と自社サービスで年収の水準と伸び方がどう違うかを示します。そのうえで、それぞれの働き方で年収が伸びる人と伸び悩む人の違い、受託から自社サービスへ移るときに問われること、どちらの働き方でも年収につながる経験の積み方を整理します。

PHPの仕事は、受託と自社サービスで経験の積み上がり方が違う

PHPの仕事を年収の観点で分けるときは、1つのコードベースにどれだけ長く関わるかで分けると、違いが見えやすくなります。

観点 受託開発 自社サービス
1つのシステムに関わる期間 納品までの数か月などで区切られやすい 数年単位で同じサービスに関わる
経験の広がり方 多くの業種や構成を経験できる 1つのサービスを深く理解する
身につきやすい力 見積もり、要件の整理、短期間での構築 性能の改善、運用、長く保守できる設計
年収の伸びを決めるもの 案件の単価と、任される役割の大きさ サービスの成長と、任される範囲の広さ

受託の仕事では、納品が一つの区切りになります。短い期間で多くの案件を経験できるため、要件を整理して素早く形にする力が身につきます。一方で、納品した後に利用者が増えてどんな問題が起きたのか、数年たってコードがどう保守されたのかを見る機会は少なくなりがちです。

自社サービスの仕事では、同じサービスに長く関わるため、自分が書いたコードの結果を後から見ることになります。利用者が増えたときの性能の問題、機能を追加し続けたときの構造の崩れ、障害の原因分析などを経験する機会が多くなります。どちらの経験にも価値がありますが、年収の高い帯の会社が重視しやすいのは、長く使われるサービスでの判断の経験です。

受託とメガベンチャー・外資で157万円の差が出る

実務3〜5年、東京勤務、スキル中位を固定し、企業タイプだけを変えた推定レンジは次のとおりです。

企業タイプ推定レンジレンジの図
メガベンチャー・外資604〜709万円
上場・大手531〜624万円
中小の受託・SIer459〜539万円
スタートアップ483〜567万円
SES411〜482万円
条件:3〜5年/東京/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

中小の受託・SIerの推定中央値は 499万円、メガベンチャー・外資は 656万円 で、157万円 の差があります。同じ経験年数と技術の水準でも、所属する会社の給与テーブルによって出発点が変わります。表は条件を揃えた推定であり、個別の会社の提示額を保証するものではありません。

受託の会社では、顧客から受け取る開発費の範囲で給与の原資が決まります。PHPの受託には、比較的小さな規模のWebサイトやシステムの案件も多く、案件の単価が給与の上限を決めやすい構造があります。自社サービスの会社では、サービスの利益が給与の原資になるため、事業が伸びていれば、改善を担う人に高い給与を払いやすくなります。企業タイプによる差の仕組みは企業タイプ別のエンジニア年収相場で整理しています。

経験年数ごとの伸び方を比べる

受託と自社サービスの違いは、ある時点の金額の差より、経験を積んだときの伸び方の差として表れます。中小の受託・SIer、東京勤務、スキル中位を固定し、経験年数だけを変えた推定レンジは次のとおりです。

実務経験推定レンジレンジの図
未経験294〜345万円
1年未満330〜388万円
1〜2年367〜431万円
3〜5年459〜539万円
6〜9年551〜646万円
10年以上624〜733万円
条件:中小の受託・SIer/東京/スキルスコア50。公開統計をもとにした推定であり、実際の年収を保証するものではありません。算出方法

同じ条件で、中小の受託・SIerの実務1〜2年の推定中央値は 399万円、実務6〜9年では 599万円 です。メガベンチャー・外資では、実務1〜2年が 525万円、実務6〜9年が 788万円 で、経験を積むほど金額の差は広がります。

この推定モデルは、企業タイプごとの係数を経験年数の全体にかけて計算しているため、差が広がるのは計算上の性質でもあります。ただ、実際の職場でも、給与テーブルの上限が高い会社ほど、経験を積んだ後の伸びしろが大きい傾向は同じです。受託の会社で年収を大きく伸ばしたい場合は、今の会社の中で役割を大きくするのか、上限の高い会社へ移るのかを、経験の早い段階から考えておくと選択肢を狭めずに済みます。

受託で年収が伸びる人と伸び悩む人

受託の仕事でも、年収を伸ばしている人はいます。違いは、案件の数を重ねているか、案件の中で任される役割を大きくしているかにあります。

伸び悩みやすいのは、似た構成のサイトやシステムを、決められた手順で作る案件が続く状態です。経験年数は増えても、判断の範囲が広がらないため、次の等級に上がる根拠が作れません。短い期間で次々に案件をこなす忙しさから、振り返りや学習の時間が取りにくいことも、伸び悩みの原因になります。

伸びる人は、案件の中で、要件の整理、技術の選定、見積もりの根拠づくり、ほかのメンバーのコードの品質の管理といった役割を引き受けています。たとえば、案件ごとにばらばらだった構成を整理して、共通の部品やテストの仕組みを作り、次の案件の開発期間を短くした経験は、会社の利益に直結する実績です。受託の会社で上の等級に進むには、自分の案件だけでなく、会社全体の開発の進め方に影響する取り組みが評価につながります。

自社サービスで年収が伸びる人と伸び悩む人

自社サービスの仕事でも、同じサービスに長くいるだけで年収が伸びるわけではありません。違いは、サービスの課題を自分で見つけて、改善の判断を任されているかにあります。

伸び悩みやすいのは、企画の担当者が決めた仕様を実装する役割にとどまっている状態です。自社サービスでは、長く関わるほどサービスの事情に詳しくなりますが、判断を任されていなければ、その知識は評価に表れにくくなります。古いコードの保守だけを任され続け、改善の提案が通らない職場では、伸びしろが限られます。

伸びる人は、画面の表示の遅さ、障害の多い箇所、機能を追加しにくい構造など、サービスの課題を自分で見つけ、改善の優先順位を提案しています。たとえば、利用者の多い画面で、データベースへの問い合わせが重なって表示が遅くなっている問題を測定で特定し、改善した結果を説明できる人は、設計と運用の両方を任される段階へ進みやすくなります。

PHPで年収につながる技術の力

受託でも自社サービスでも、PHPで年収につながりやすい技術の力は共通しています。言語の挙動を正しく理解し、長く保守できるコードを書き、性能と安全性に責任を持てることです。

PHPは柔軟に書ける言語で、値の比較や型の変換が意図しない結果になる場面があります。こうした挙動を理解していないと、特定の入力のときだけ起きる不具合を生みやすく、原因の特定にも時間がかかります。型の宣言を使って意図を明示する、厳密な比較を使う、テストで境界の値を確かめるといった書き方ができる人は、コードの品質を任されます。

安全性も重要です。Webの入り口になる仕事が多いため、入力値の扱いや、データベースへの問い合わせの組み立て方を誤ると、情報の漏えいなどの深刻な問題につながります。フレームワークの仕組みを理解したうえで安全な書き方をチームで揃えられる人は、どの企業タイプでも評価されます。さらに、古いPHPのバージョンで動くシステムを、影響を調べながら新しいバージョンへ移行した経験は、判断の範囲が広い実績として示しやすいものです。

受託から自社サービスへ移るときに問われること

受託から自社サービスへ移るとき、提示額を左右するのは、長く使われるサービスでの判断を想像し、説明できるかです。受託の経験が長くても、納品した後のことを考えた経験を示せないと、経験年数より低い等級で評価されることがあります。

自社サービスの面接では、作ったものが利用者に使われ続けたときに何が起きるかを問われることがあります。受託の経験しかない場合でも、納品後の保守を担当した案件や、同じ顧客のシステムを何年も改修した経験があれば、その中で起きた問題と、自分がどう直したかを話せるように整理しておきます。

受託の経験の強みは、多くの業種と構成を見てきたことです。要件を整理する力や、限られた期間で形にする力は、自社サービスの新しい機能の開発でも役に立ちます。強みを伝えつつ、長く保守する視点を持っていることを示せれば、経験を評価されやすくなります。移る判断そのものはエンジニアが転職すべきかの分かれ目も参考にしてください。

求人票で見るポイント

PHPの求人は、受託か自社サービスかで、同じ職種名でも経験の積み上がり方が違います。提示額の妥当性を判断するために、次の点を確認します。

  • 受託か自社サービスか、受託なら元請けか下請けか
  • 受託なら、同時に担当する案件の数と1件あたりの期間
  • 自社サービスなら、リリースの頻度と、運用や障害対応の担当
  • 使っているPHPとフレームワークのバージョン、移行の予定
  • テスト、レビュー、安全性の確認の体制
  • 次の等級へ上がるときに求められる判断の範囲

受託の求人で、案件の数が多く期間が短い場合は、忙しさの割に判断の範囲が広がらない可能性があります。自社サービスの求人で、運用や障害対応まで担うのに提示額が実装中心の水準なら、責任と報酬が釣り合っているかを確認してください。求人票の年収レンジの読み方は求人票の年収レンジの読み方で整理しています。

職務経歴書でPHPの実績を示す

職務経歴書で「PHPでWebシステムを開発」とだけ書くと、受託でも自社サービスでも、判断の中身が伝わりません。書き分けたいのは、どんなシステムで、どんな役割を担い、何を判断して、結果として何が良くなったかです。

受託の実績なら、案件の数を並べるより、代表的な案件を選び、「案件ごとに異なっていた構成を整理して共通の部品を作り、次の案件から開発の期間を短くした」のように、会社の開発の進め方に与えた影響を書くと伝わります。自社サービスの実績なら、「表示が遅い画面の原因を測定で特定し、データベースへの問い合わせを見直して改善した」のように、課題の発見から改善までを書きます。数字を書く場合は、自分が関わった範囲に限ってください。

書き方の型はエンジニアの職務経歴書で提示年収が変わる理由で整理しています。

平均年収の数字との比べ方

ITエンジニア全体の平均年収は 469万円(2025年) です。この数字はエンジニア職全体の平均で、PHPエンジニアだけの平均ではありません。情報処理・通信技術者の有効求人倍率は 1.39倍(令和8年3月) ですが、こちらも使用言語を区別した数字ではありません。

どちらの数字も、PHPエンジニアとしての自分の年収が適正かどうかを直接示すものではありません。平均より高いか低いかだけで判断すると、受託か自社サービスかという働き方の違いを見落とします。PHPエンジニアの経験年数・企業タイプ・勤務地別の推定レンジはPHPエンジニアの年収相場ページでも一覧で確認できます。

まとめ

  • PHPエンジニアの年収は、受託か自社サービスかで経験の積み上がり方が変わり、伸び方が変わる
  • 実務3〜5年・東京・スキル中位では、中小の受託・SIerとメガベンチャー・外資の推定中央値に157万円の差がある
  • 受託では案件の中で任される役割、自社サービスでは改善の判断を任されているかが伸びの分かれ目になる
  • 言語の挙動の理解、長く保守できるコード、性能と安全性への責任が、どちらの働き方でも年収につながる
  • 受託から移るときは、納品後のことを考えた経験を整理し、長く保守する視点を示す

自分のPHPのコードを読む力が、同じ経歴のエンジニアの中でどの位置にあるかは、PHP診断で確認できます。